
まずタイトルのシンプルさがいい。潔さを感じる。
突然、「友達」と言われたら誰だってひるんでしまう。facebookで友達申請をするとき、されるときの躊躇(ためら)いと似ている。
友達ってなんだっけ?
そして「友達」には友達が出てこないのがいい。タイトルが「友達」だからてっきり友達が出てくるのかと思ったら、でてこない。
詐欺だ。友達について教えてくれるのかと思ったら、全然教えてくれない。
さらにタイトルとは裏腹に全然いい話じゃないのがいい。決して友情物語ではない。
そりゃそうだ、友達は出てこないのだから。自己犠牲の話でも、仲間との成功物語でもない。
事前に言っておきますが、これはホラーとかブラックコメディに属する作品です。
それなのに読み終わった後、どこかすがすがしさがある。
顔を上げ、周りの世界を見渡すと、そこにはいくつもの色彩があることに気づく。
今まで気づかなかった光の陰影と、それに伴う湿度を発見する。世界はどうやら思ってるよりも複雑らしい。
つまりは安部公房とはそういう人なんだと思う。
当たり前だと思われている現実に、すっーとナイフで切れ目を入れる。
そこから流れる痛みを伴わない血を読者にそっと差し出す。
手際の良い執刀医のように。
そういう人を僕は「人の皮をかぶった悪魔」と呼んでるのだけど、
僕もこの作品を演出する以上「悪魔」になってみようと思っている。
ウォーリー木下
ウォーリー木下
1971年東京都出身。1993年、神戸大学在学中に劇団☆世界一団(現sunday)を結成。全作品の作・演出を務める。特に役者の身体性を重視した演出が特徴。台詞を使わず、プロジェクションマッピングや日常音の拡張、視覚的なトリックを取り入れて演劇・映像・音楽・ダンスを融合させた作品が国内外で注目を集める。10カ国以上の国際フェスティバルに招聘され、エジンバラ演劇祭では五つ星を獲得。演出家として韓国およびスロヴェニアでの国際共同製作も行う。近年の主な活動に、関西二期会オペラ『愛の妙薬』演出、観客体験型演劇『YOUPLAY』作・演出、東京パフォーマンスドールPLAY×LIVE『1×0』作・演出、『多摩1キロフェス』ディレクターなどがある。
最近の主な外部作品
2009
The Original Tempo『Shut up, play!!』海外ツアー [ シンガポールアーツフェスティバル招聘/ロンドンBACコメディフェス招聘/エジンバラフリンジフェス参加/台湾桐花祭り招聘 ]
The Original Tempo エジンバラフリンジフェス参加公演『Shut up, play!!』
『素浪人ワルツ』韓国公演@Chuncheon International Theater Festival in KOREA
『素浪人ワルツ』韓国公演@Pusan International Theater Festival in KOREA
2010
The Original Tempo『喋るな、遊べ!!』TACT琵琶湖ホール/大阪HEP HALL/高知県立美術館
京阪電車100周年事業『サーカストレイン』
2011
オリジナルテンポ演劇学校CAMP!!『WORDS OR NOT WORDS』総合演出
2013
関西二期会 リリカ・イタリアーナ『愛の妙薬』
観客体験型演劇『YOUPLAY』
東京パフォーマンスドールPLAY×LIVE『1×0』
『多摩1キロフェス2013』フェスティバルディレクター