ストーリー 男は竹藪の中を、何者からか逃げている。
遠くでカエルの男が見ている。いったい彼は何から逃げているのか。

時は江戸時代。
ひとりの侍が街頭で酔っ払いに絡まれて殺傷事件を起こす。
侍の名は飯島平左衛門。結果はおとがめなし。
殺された男は無駄死に。切捨御免の時代だ。

それから18年後。
飯島家にひとりの若い奉公人・孝助がやってくる。
彼は誰よりも忠義に熱く、信義に強い。
しかしそのときはまだ誰も知らない。
この孝助が18年前に飯島に殺された男のひとり息子であることを。
孝助は目の前にいるのが長年探し求めている仇討ちの相手だとは露知らず。

飯島の娘・お露は心に病を抱えている。
彼女と女中のお米は横川沿いで別荘暮らしをしている。
そこにやぶ医者の山本志丈とその友人で浪人の新三郎が訪れる。
新三郎とお露は一目で恋に落ちる。
しかし飯島に娘を浪人にやるわけにはいかなかった。
ふたりは夢の中で逢うしかなかった。

そして自殺したお露の幽霊が新三郎の長屋へと夜な夜な通う。
牡丹の灯籠と、竹の揺れる音。カランコロン。

しかしそれはまだこの群像劇のプロローグに過ぎなかった!

飯島の暗殺を企む妾のお国と源三郎、そして殺し屋の顛末とは。
消えた百両と貧乏長屋の夫婦に巻き起こる悲喜劇とは。
そこに二人の女中の禁断の恋や花火師たちの思惑、
長屋の人々の出来事、鉄砲の行方、別れた母親との再会など。
そして孝助の仇討ちはどこに向かうのか。

まるで灯籠に集まる虫たちのように彼らはラストに向かってひとつに繋がっていく。

悪とはなにか。善とはなにか。
見えないことのなかに真実はあると言われるが、見えないものの中に、なにを見ろというのか。